電動車椅子やくざのおっさんに出会った。

傾斜のきつい坂道をとぼとぼと歩いていると、ある店の前で車椅子が停まっていました。おっさんでした。付き添いの人も、この坂で車椅子を押していくのはかなりの体力が要るだろうな、と思っていると、付き添いの人は明らかに日光を遮るためだけではない、威圧の効果を前面に押し出したサングラスをしておられました。一方、車椅子に乗っているおっさんは、朗らかそうなおっさんです。しかし、そのおっさんは店のウインドウを一心不乱に見入っていました。店は、一見、普通の武道具屋で、剣道具などが飾ってありました。昔の剣道部時代を懐かしんでいるのだろうかと勘繰りながら、横に視線をずらすと、そこにはドスが真剣でずらりと並び、その刃先が木漏れ日にきらりと反射し、私の目に突き刺さるかのようでした。一瞬、目を閉じて、刹那、目を開くと、おっさんは鼻糞をとろうと小指を鼻の穴に突っ込んでいました。